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NEW!菊に込める願い

つくる楽しみ。いただく喜び。こころ華やぐWagashi biyori(和菓子びより) Vol.04
NEW!菊に込める願い
by 杉井 ステフェス淑子

みなさま、こんにちは。まだ暑さの残る日もありますが、少しずつ秋を感じるようになりましたね。和菓子も葛や寒天を使ったものは終わり、秋のものが並びはじめます。秋の花は数ありますが、この時期、一番使われるのはやはり「菊」でしょう。今号では、「菊の和菓子」をご紹介します。写真の「菊」は、「着せ綿」という練り切りです。みなさんは「重陽の節句」という風習を聞いたことがありますか?

五節句のひとつである「重陽の節句」は、奈良時代に中国から伝来した旧九月九日を「重陽」と呼んで祝う風習。そして、日本独自の風習として根付いたのが「着せ綿」です。

重陽の前夜に、薬草でもある菊の花を真綿でおおって香と夜露をうつしとります。翌朝その真綿で顔や体を清めると、不老長寿が叶うと行われたのが「着せ綿」です。そしてその綿の色には決まりもあり、白の菊には黄色、黄色なら赤、赤系には白い綿を使うのだとか。さらに色の違う小さな綿をのせて、しべを表すものもできました。当時、宮中では菊を観賞する宴が行われ、菊の花を浮かべた酒を飲み、詩歌を詠んだとあります。「重陽の節句」は、別名菊の節句と言われるように菊の花が主役です。

色付けした練り切りあんにスジをつけ、咲き切る直前の菊の花びらを表現。その上に着せ綿をイメージした白あんをのせました。菊を愛で、不老長寿を願う和菓子です。

NAGATSUKI:

九月の和風月名は、夜長月であることから長月となっていますが、他に、菊月、菊咲月、菊開月などの別名もあるのだそうです。

Writer’s Profile

杉井 ステフェス淑子
杉井 ステフェス淑子
和菓子作家。アメリカでオーダーメイドの和菓子作品の制作、オンライン和菓子教室やワークショップ、デモンストレーション、展示を行う。著書「甘くてかわいい、食べられる宝石 琥珀糖のレシピ」 日本・台湾・香港にて上梓。

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