
水が合った、イギリス暮らし
プロレスと、格闘技研究に、私生活。イギリスは私にとって最高に水が合っていました。
イギリス人はツンとして威張っていると聞かされていましたが、当初から私の英語は、片言であっても日本風に話していました。例えば「何々をしてくれる?」と言うフレーズを、「何々をしていただけますか?」と丁寧に喋ると、その倍ほど丁寧に接してくれるのです。ミルクティーもフィッシュ&チップスも、ステーキ&キドニーパイも、ヨークシャープディングも、私には最高の食事でした。
実績を積み確固たる地位を確立
そんなイギリスで余裕を持ってこなしていたプロレス生活も、ある日、突然レベルが引き上げられます。マーク・ロコという、同階級ではイギリスマット界最高の選手の一人と、試合が組まれたのです。ロコはこれまで対戦した選手の中で は群を抜いていました。最初は中ぐらいの会場でしたが、やがてその白熱する試合に合わせ、ロイヤル・アルバートホールでの試合が組まれていったのです。

そんな中、いよいよゴッチさんがイギリスへやって来ます。運命のプロモーターとの話し合い……。 明らかに慌てている彼は、ゴッチさんを直視できないまま、強張った作り笑いをして固まっています。
その時、ゴッチさんが彼に言った言葉は、文句などではなく、私のギャラを上げてやれ、と言うセリフでした。
彼は助かったと思ったかどうかは知りませんが、急ににこやかな表情になり、「勿論です!」と言い、ゴッチさんの言うとおりの金額に「イエス!」と答えるのでした。そして翌日から、私のギャラは倍になるのでした!
ロコとの試合は、より噂を呼び、私はイギリスでの地位を更に確立していきす。
歴史を動かす1本の電話
ある日、もう一人のイギリス最高の選手の話題で、控室が大騒ぎになってい ました。
「トミーが帰ってくる!」トミー?、誰それ?という私の対応に、「トミーだよ、ダイナマイト・キッドだよ! 日本でも有名だろう?」。三年近く日本を離れている私は全く知らない名前でしたが、皆から愛されている選手であろう事は、レスラー達の異常な騒ぎで分かりました。
私はどういうヤツか興味津々で、後日、控室で実際に会ってみると、皆が言うだけあっての好青年でした。彼との対戦の記憶は全くないのですが、最近、当時のポスターを持って来てくれたライターさんがいて、タッグで組んでいたかも知れませんよ、と言われていたのです。彼もベビーフェイス*だったので試合で当たる可能性はありません。しかし、この原稿を書いている時、何となくタッグパートナーとして組んだ記憶が、微かに出て来た気がしました。
充実したイギリスでの生活。この時、 タイガーマスク最大の影響力がここにあったとは、まだ誰も知りません。
そんな中、どこでどう調べたのか、日本から私の恩師である新間さんから電話が入って来ました。私がイギリスに渡った事は知らないはずです。ましてや私の名前はサミー・リーです。
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