
クスリは使い方次第
皆さんは普段、アメリカの薬・日本の薬、どちらを使っていますか? 中には両方、という方も多いかもしれません。気楽に病院にかかれる日本と違い、アメリカでは医療体制の違いから、薬を手にするまで時間がかかる場合もあります。一方で、処方箋がなくても様々な薬が薬局やオンラインで気軽に買えるけど、どれを買えばいいか迷う場面も多いのではないでしょうか。医療費が高く、セルフメディケーションの考えが進んだアメリカで生活する上で、ある程度の薬の知識を備えておく事は、必要不可欠です。
クスリは反対から読むとリスク。本来、薬は不快な症状をラクにしてくれるものですが、間違った知識や使い方によっては、時として毒となります。本来人間には病気を修復する力があります。薬は必要な時に適切な量を。このコラムでは、安心してアメリカ生活を送るための「クスリのいろは」をお伝えします。
日米の主な解熱鎮痛薬
さて、第一回目のテーマは、「解熱鎮痛薬」。日本ではロキソニンやバファリン、イブなどが思い浮かぶのではないでしょうか? 実は、日本で馴染み深いロキソニンは、アメリカでは同じ成分の薬はありません。一番近い薬がイブプロフェンです。また、アメリカで解熱鎮痛薬として一番耳にするのは、Tylenolタイレノール(一般名:アセトアミノフェン)。この代表的な2剤の日米での用法用量を表にまとめました。体格差があることを含めても、小児への使い方や最大用量が違うことに驚きますね。アセトアミノフェンは、子どもからお年寄りまで安心して使用できるため、第一選択薬として使われることが多いです。ただ、飲みすぎると肝臓に負担がかかるので、不必要な過量服用や、お酒と一緒に飲む事は避けたいですね。
「タイレノールで効果がなければ、イブプロフェンを飲んでね」と、病院でよく聞きます。タイレノールでは効果がないから、と、最初からイブプロフェンなどを飲む方もいると思います。イブプロフェン、アスピリン、ロキソニンなどは、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類され、気を付けたいのが消化管への負担です。できるだけ空腹時を避けて、長期間飲む必要がある際は、胃薬も一緒に飲みましょう。NSAIDsの中で特に気を付けたいのがアスピリン。小児の風邪、特にインフルエンザの場合の時にアスピリンを飲むと、ライ症候群という脳症を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。
薬のパッケージの裏も読む
薬局で薬を買う時、商品名にTylenolと書かれていても、主成分のアセトアミノフェン以外の成分、例えば咳止め、鼻水止め、などが一緒に入っていたり、用量が異なることもあります。ぜひ、パッケージの表はもちろんですが、裏のIngredients(成分)Directions(使用方法)の所もよく読んでください。
アメリカではアセトアミノフェンとオピオイド系鎮痛薬の合剤(処方が必要)なども多く存在します。近年、オピオイドの過量投与による死亡例が後を絶ちません。気軽に痛み止めを漫然と服用すると、どんどん強い痛み止めが必要な体になってしまう場合もあります。どの薬ででも言えることですが、2週間経っても症状が改善しない場合は、医師の診断を受けましょう。
主な商品名 | 用法用量 | 子供に対しての使用 | ||
---|---|---|---|---|
OTC | 処方箋あり | |||
日本 | カロナール 小児用バファリン |
1回~300㎎ 4-6時間おき 最大1000㎎/日 |
1回300-1000㎎ 4-6時間おき 最大4000㎎/日 |
10~15㎎/kg 4-6時間おき 最大60mg/kg/日 |
米国 | Tylenol、NyQuil® Robitussin® |
1回325-1000㎎ 4-6時間おき 最大4000㎎/日 |
約10~15㎎/kg 4-6時間おき lbとml計算が多いので注意 |
主な商品名 | 用法用量 | 子供に対しての使用 | ||
---|---|---|---|---|
OTC | 処方箋あり | |||
日本 | ブルフェン イブA、イブクイック |
1回150-200㎎ 3回 最大600mg/日 |
1回200㎎ 3回 最大600mg/日 適宜増減 |
OTCは15歳未満使用禁止 処方箋ありの場合は、5歳以上、医師の指示で |
米国 | Advil Motrin |
1回200-400㎎ 4-6時間おき 最大1200mg/日 |
1回200-400㎎ 4-6時間おき 最大3200mg/日 |
生後6か月からOTCあり 約7.5㎎/kg/回 2歳以下は医師の指示通り |
Writer’s Profile

関連記事
茄子のカリウムで夏バテ予防! 夏に定番のそうめん。食欲のない暑い夏に大活躍な食材です。そんな「そうめん」は、なんと1200年の歴史を持つそう。古くは平安時代から食べられていたとも言われています。そうめんの製造工程は、まず […]
暑い夏に! 爽やかビタミンゼリー 柑橘類の代表格、オレンジ。ビタミンCが豊富に含まれ、コラーゲンの生成を促すため、美肌に効果があるので、特に女性には嬉しい果物ですね。オレンジの中でもバレンシアオレンジより、ネーブルオレン […]
夏のむくみをズッキーニで解消! 夏に旬を迎えるズッキーニ。たんぱくな味わいとみずみずしい食感が特徴的です。その形や形状からきゅうりの仲間と思われる方も多いかもしれませんが、実はかぼちゃの一種。体内のナトリウム(塩分)を排 […]
みなさん、こんにちは。六月になり、今年も折り返しとなりますね。水無月という和名は、水も枯れ尽きるという意味合いの「水な月」から変化したなど諸説あります。蒸し暑い日が続くと風が恋しくなるという意味から「風待月」という美しい […]
サラダの種類に付いている名前について考えたことはありますか? まず、地名や人名などの固有名詞がついて有名になった物を挙げて、その由来を探ってみました。次に、サラダを作る方法や形態から名前が付いた物を挙げて解説しています。 […]
まるごとレモンでビタミンチャージ! ビタミンCの代表選手とも言えるレモン。レモンの爽やかな酸味と香りは、お料理を引き立たせてくれるだけでなく、風邪の予防など健康に嬉しい栄養素も含まれています。レモンは色々なお料理に使える […]
ワインによく合う! パプリカでおもてなし お客様をおもてなしする時、「どんなメニューにしよう・・」と悩むことがありませんか? そんな方のために、ホームパーティーでの献立の組み立て方についてご紹介したいと思います。 私がい […]
皆さんは最近、食品分野で「フリーズドライ」という言葉を聞きませんか? よくお客様にインスタント味噌汁とフリーズドライの味噌汁の違いは何ですか?と聞かれる事があります。フリーズドライは元々宇宙食の技術を応用したものです。宇 […]
アメリカのポテトの種類って、どのくらいあるのでしょうか? 起源をたどると、南米のアンデス山脈付近で、紀元前5千年~8千年の頃から栽培されてきた物なんですね。世界に約4千種はあると言われる中で、アメリカだけでも約200種 […]
みなさま、こんにちは。春の陽気がここちよいですね。昨年末「菓銘をもつ生菓子(練り切り)」が、文化庁「登録無形文化財」となりました。和菓子には、団子や羊羹という種類の名前のほかに、「菓銘」という「名前」が付けられているもの […]
みなさま、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。11月、霜月となりました。今年も残すところわずかですね。日に日に寒暖の差も激しくなってきますので、今号では温かい和風スフレのレシピをご紹介します。スフレは17世紀のフランスで […]
おすすめ記事
九州南部のとある漁師町。県全体の7割もの漁獲量を誇り、天然の良港に恵まれた町がある。最寄りの駅からは、峠を越えて、くねくねしたリアス式海岸沿いの道を車で走らせること30分。穏やかな海に囲まれた漁港のそばで、何隻もの漁船が […]
海外で暮らすと空気が読めなくなる…!? パックンに相談です。先日、5年間のアメリカ生活を終えて日本に帰国したのですが、海外生活が長かったせいか日本人特有の「空気を読む」ことが難しくなっています。会食中に「最後の一個残し」 […]
まるごとレモンでビタミンチャージ! ビタミンCの代表選手とも言えるレモン。レモンの爽やかな酸味と香りは、お料理を引き立たせてくれるだけでなく、風邪の予防など健康に嬉しい栄養素も含まれています。レモンは色々なお料理に使える […]
私は、所属しているU.S. armyからの辞令で、テキサスにある基地に転勤となり、2020年に3年の予定でコロラド州のデンバーからテキサス州コーパスクリスティに越してきました。コーパスクリスティはテキサス州で8番目の都市 […]
「頭金ゼロでも、利息が高いけど購入可能らしい」というのは本当ではありません。自宅購入の場合、頭金は最低3%必要。投資物件なら25%は欲しいところです。毎月の住宅ローンの支払いは、①元本と②利息、③固定資産税と④家の保険の […]
by サイラス・リュウイチ・トラン サッカーは、多くの人に開かれたスポーツです。私は、プロサッカーチームのないハワイで生まれ育ちましたが、幼少の頃からボールを必死に追いかけて、プロサッカー選手になる夢を叶えました。そして […]
新着記事
日本ではオレオレ詐欺などに代表される、電話を使った詐欺。アメリカにもいっぱいあります。むしろ頻度は米国の方が酷いかも?引っ越してきたばかりの頃は、状況が理解できず詐欺の被害に遭ってしまう方もいらっしゃるので注意が必要です […]
過日、ネットフリックスで『平家物語』のアニメを観たという知人の子供から「壇ノ浦ってどこにあるの?」と尋ねられて答えに窮した。歴史の散策探訪に興味があり、壇ノ浦合戦場の跡地にも実際に足を踏み入れている筆者がこれに即答できな […]
石田純一 1954年東京都生まれ。1972年NHKドラマでデビュー。80年代には、数々のトレンディードラマに出演し、絶大な人気を得る。ドラマや舞台、映画など多方面で活躍。2021年に始めたYouTubeチャンネル「じゅん […]
by ルーバル朋子 スペインの宣教師がカリフォルニアで最初のミッションを建てたことから、サンディエゴのオールドタウンはカリフォルニア生誕の地と呼ばれていることをご存知ですか? ミッションはカリフォルニアに21ヶ所建てられ […]
60歳をこえると、少しの風邪が平気で長引くようになる。発熱と咳、なかなか治らんなぁと思っていたら軽い肺炎だった。少し体調が良くなったかと思えば、今度は集中豪雨。海がしけては漁に出られない。体調と天候の悪化がかぶると、漁師 […]
女子神職として初めての祭事で失態を犯してしまった私は、当日はさすがに落ち込んだものの、そこから心身ともに逞しく成長していった。ある意味初めに失敗したことで、もう恐れるものは何も無いという気持ちになったのだ。 そのうち祈祷 […]
by Satsuki 仕事を辞めて駐在妻になる! そう決めたのは私自身なのに・・・ だんだん失っていく自信と自分に対するアイデンティティ。 これから先、私の人生はどうなるんだろう。 不安に押しつぶされそうになっていたのは […]
左右の絵では違うところが 10 個あります。全部見つけられるかな? 答え 問題に戻る
新型コロナウイルスは2023年現在、かつてのような深刻な脅威ではなくなっています。その理由の一つには、迅速なワクチンの開発があります。かつて多くの命を奪った病気を、ワクチンによって撲滅させた偉大な医学者を紹介します。 「 […]