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歴史に名を残す有名シェフたち

世界史雑談 ヒストリーサイドトリップ Vol.04
歴史に名を残す有名シェフたち
by 尾登 雄平
世界史雑談(ヒストリー サイド トリップ)

エジソンやベルのような技術者たちが現代のテクノロジー社会を作ってきたように、食に生涯を捧げた料理人たちによる探求が現代の食文化を作ってきました。食の歴史に名を残す有名シェフたちを紹介します。

ルネサンス料理の代表的シェフ バルトロメオ・スカッピ

バルトロメオ・スカッピはルネサンス時代のイタリアで、ローマ教皇に仕えた料理人です。1570年に彼が記した料理書は、何年にも渡って重版されました。彼のレシピは典型的なイタリア・ルネサンス料理です。例えば、中世で好まれた甘い風味の料理が見られる一方で、七面鳥などの新大陸の新しい食材やパイ生地といった新たな技法も取り入れられています。

スカッピの最先端のレシピに学んだフランス人によって、後にフランス料理が発展していきます。フランスは18世紀半ばには宮廷料理が花開き、ヨーロッパ一の料理大国になりました。

フランス料理の父 アントナン・カレーム

近代フランス料理を代表するシェフはアントナン・カレームです。彼は貧しい労働者階級から、19世紀前半の政治家タレーランの専属シェフになりました。1814年にナポレオン戦争後の講和会議であるウィーン会議の夕食会の料理を任されました。その味と独自性はヨーロッパ各国の出席者の話題をさらい、カレームはヨーロッパ一の有名料理人となりました。

彼が執筆した本とレシピは、近代フランス料理の基礎となるもので、その後のシェフに大きな影響を与えました。フランスに始まった料理の近代化は世界中の国に導入され、例えば近代ポーランド料理、近代スウェーデン料理などは、フランス料理の発想で現地料理を洗練させたものです。

中国薬膳料理の始祖・忽思慧(こつしけい)

中国伝統の医食同源の思想を体系化し書にまとめた人物が忽思慧です。1315年ごろにモンゴル帝国の大カーン、アユルバルワダに仕え宮廷の料理責任者となりました。伝説によると、アユルバルワダは忽思慧のスープを飲んで腎臓痛が消え、同じスープを飲んだ皇后が懐妊し「二重の歓び」を得たそうです。忽思慧は健康な体を作るための料理レシピ本「飲膳正要」を執筆しました。健康な生活を送るための食生活、衛生管理方、妊婦や子供、病気にかかったときにどの食品を食べるべきかなど、食べ物がいかに体に作用するかを書き記しました。

握り寿司を発明した 華屋与兵衛

握り寿司を発明したのは江戸の料理人・華屋与兵衛と言われています。中世では寿司といえば、米飯に魚を漬け半年以上発酵させた「なれずし」が一般的でした。1750年代には2〜3日重石を乗せた早寿司が江戸で売られるようになりました。しかしせっかちな江戸っ子の需要に応えるにはまだ遅いと考えた与兵衛は、酢飯の上に生の魚の切り身を乗せ、掌で握り締めて客に出しました。天ぷらなどのファストフードが普及していた江戸でこれが大ヒットし、握り寿司は江戸の人たちの大好物になっていきました。

Writer’s Profile

尾登 雄平
尾登 雄平
ブログ「歴ログ-世界史関連ブログ-」や、YouTubeでの活動を中心に、面白い世界史のネタを集める。2022年11月、新著「働き方改革の人類史」(イースト・プレス)発売。

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