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秘密の用途がある有名建築物

世界史雑談 ヒストリーサイドトリップ Vol.08
秘密の用途がある有名建築物
by 尾登 雄平
世界史雑談(ヒストリー サイド トリップ)

観光客が多く訪れる有名建築物の中には、本来の目的とは別の役割を担っていたことがあります。今では使われなくなって忘れ去られた機能をご紹介します。

エッフェル塔 = 科学実験場

エッフェル塔の頂上には、設計者ギュスターヴ・エッフェルの「秘密の実験場」がありました。エッフェルは建築家でしたが、気象学や航空力学にも造詣が深く、パリで最も高い場所に実験場を設置しました。彼は塔をかなり私物化していたようで、塔の上から自分の糞を落として落下までどれくらいの時間がかかるかを計測したこともありました。エッフェルの実験場は科学技術の発展のための象徴的な場所でしたが、エッフェルの死後20年をもって閉鎖されました。

エンパイア・ステートビル= 飛行船の発着場

エンパイア・ステートビルには「飛行船の発着」機能があります。ビルの103階がプラットフォームになっており、飛行船から降りた乗客はエレベーターに乗ってわずか7分で地上に降りることができます。ところがプラットフォーム部分は400メートル以上の高さにあり、猛烈な風が吹くためドッキングは相当困難でした。1931年にグッド・イヤー・ブリンプ・コロンビア号を始めいくつかの飛行船がドッキングに成功しましたが、接続時間はわずか3分程度。あまりにも困難だったので、それ以降利用されることはありませんでした。

ブルックリン橋= シャンパン販売所

1883年に開通したブルックリン橋は、マンハッタンとブルックリンを結ぶ橋です。ブルックリン橋には地下施設が存在し、1930年代まで富裕層のための「シャンパン&ワイン販売所」として機能していました。シャンパン販売所は、ニューヨーク側とブルックリン側にそれぞれ一つずつあり、当時ニューヨークで手に入る最高級のシャンパンを販売していました。ニューヨーク市はブルックリン橋の建設のために多額の借金をしており、その返済のためにこの地下施設を賃貸していました。禁酒法(1920年~1933年)が解かれた1930年代半ばから後半には大いに流行り、時には富裕層の「シャンパン・パーティ」が催されていました。現在ではメンテナンス機器を補完するための倉庫になっているようです。

自由の女神像 = 巨大灯台

自由の女神像は、ごく初期に「灯台」として使われていたことがあります。当時の大統領クリーヴランドの鶴の一声で何かニューヨークにシンボリックなものを作ろう、となったことがきっかけ。女神が右手に持つたいまつの上に9つの電灯を設置しました。しかしあまりにも光の位置が高すぎて船乗りたちにとってはあまり役に立たなかった上、光に吸い寄せられた鳥が「たいまつ」にぶつかって死亡し、その死骸が重なって光を妨害するようになってしまいました。記録では1375羽の鳥が死亡したとされます。さらに、灯台を灯すための光熱費も高額で、「自由の女神灯台」はわずか14年で撤去されてしまいました。

Writer’s Profile

尾登 雄平
尾登 雄平
ブログ「歴ログ-世界史関連ブログ-」や、YouTubeでの活動を中心に、面白い世界史のネタを集める。2022年11月、新著「働き方改革の人類史」(イースト・プレス)発売。

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