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ネクタイの歴史

世界史雑談 ヒストリーサイドトリップ Vol.10
ネクタイの歴史
by 尾登 雄平
世界史雑談(ヒストリー サイド トリップ)

現在日本では、ファッションや音楽、料理など、昭和レトロのカルチャーが流行っています。同様に、ネクタイもお父さんが締めていたようなクラシックなデザインがトレンドだそうです。そもそも、ネクタイにはどういう歴史があるのでしょうか。

ネクタイはクロアチアから来た?

現在のネクタイの源流は、17世紀前半の軍服にあります。最も有名な説が「ルイ14世の勘違い」です。三十年戦争中のフランス。クロアチアから来た兵士たちは軍服の一部としてカラフルで結び目のあるネッカチーフを身に着けていました。それを見たおしゃれ大好きルイ14世は、側近の者に「あれは何だ」と聞きました。側近の者はネッカチーフについて聞かれているとは分からず、「あれはクロアチア兵(クラバット)です」と答えました。好奇心を刺激されたルイ14世は、クロアチア兵の真似をしてネッカチーフを取り入れ、クラバットと呼ぶようになったということです。このお話は真実かどうか分かりません。しかし、ルイ14世の時代から貴族や軍人を始め、当時の流行に敏感な人々の間でクラバットを巻くのが流行したのは確かなことです。このクラバットはイギリスの貴族にも広まり、彼らが植民地経営や軍事のために世界中に進出していく過程で広まっていくことになります。

ネクタイの画一化

クラバットの人気は庶民にまで拡がりました。18世紀になると、英語で首を絞める布という意味の「ネクタイ(Necktie)」という単語が登場しました。1818年にイギリスで“The Neckclothitania”が出版され、様々な種類の複雑なクラバットのスタイルが紹介されました。1828年にH.ルブランが発表した“The Art of Tying the Cravat”では、32の異なるスタイルのクラバットの結び方が紹介されました。

しかしこのような豊かなクラバットのデザインは、産業革命を経て私たちが知るネクタイへと画一化されることになります。産業革命により働き方が変わり、人々はヒラヒラしたネクタイは動きづらく邪魔だと考えるようになりました。様々なバリエーションのあったネクタイの形は、1枚の布でできたスリムなものになっていきます。また色もかつては黒が日常で白がフォーマルな色だったものが、ほぼ黒色で統一されました。結び方も、襟にくるりと巻いて胸上で結ぶシンプルな方法がこの時に定着しました。

20世紀のネクタイ

1924年、ネクタイ作りに革命をもたらしたのが、ニューヨークのネクタイ職人ジェシー・ラングスドルフです。彼は一枚の大きな布を斜め45度にカットし、大中小の3つのピースに分け、それらを縫製してネクタイを作る方法を編み出しました。これにより、生地の無駄を大幅に省くことができるようになった上、結び目がねじれることなく均等に結ぶことを可能にしました。こうして現在我々が使っているネクタイと全く同じ構造のものが完成しました。

Writer’s Profile

尾登 雄平
尾登 雄平
ブログ「歴ログ-世界史関連ブログ-」や、YouTubeでの活動を中心に、面白い世界史のネタを集める。2022年11月、新著「働き方改革の人類史」(イースト・プレス)発売。

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