by NOBUNAGA & MERRY

40年以上前のアメリカ駐在中、私は恋に落ちました。とある銀行の窓口で働いていた女性がものすごく美しく、私の不慣れな英語にもとても優しく対応してくれたのです。理由もなく何度もその銀行に通い、ついに勇気を振り絞ってデートに誘ったものの、初デート後にあっさり振られました。思い返せばデート中、私は奥のソファ席に座り、先に自分が注文し、自分の話だけをあーだこーだとし、身勝手な行動ばかりでした。一方、ライバルのアメリカ人男性は、長身でイケメン、そして積極的に自分をアピールする。そんな彼らと張り合う私は、硬派を気取り、礼儀正しく、自己主張などしない日本男児こそイケてる、と思っておりました。アメリカ人男性の同僚に相談したところ、「そりゃだめだね」と、バッサリ。同僚曰く、そんな「俺は背中で語るぜっ!」みたいなのはアメリカ人女性には受けないし、理解もされない、と。
その日から、特訓が始まりました。レディファーストの振舞い方を徹底的に研究し、同僚から色んな作法を学びました。今の若い男性なら当たり前に行っている、初歩的なレディファースト作法。ですが40年前の日本人男性にはハードルが高く、慣れるのに相当時間がかかりました。
その後、私は彼女に再アタックしました。まずは食事に誘い、車のドアを開け、レストランでは椅子を引いて、彼女の家族や生い立ちに興味を持って話を聞き、彼女のスピードに合わせてゆっくり食べ、その後買い物に連れていき荷物を持ちました。その次のデートからは、必ず花をプレゼントしました。そして何度かデートを重ね、ついに!その女性、今の妻と結婚できました。
駐在の任期終了後、妻を連れて帰国しましたが、外国人が日本に住んでいるだけで珍しがられる時代。レディファーストに振舞う私を皆は笑っていたでしょう。でも妻は人前でも堂々とキスしたり、片言の日本語で「アイシテマスヨ、ダーリン」と大声で言ったりして、わざと周りを惑わしておりました。私も満更でもなく、幸せな結婚生活を送っていました。
そんな私たちの一人息子(編集部注:3月号のパパ日記に登場したマッシュさん)は、小さな頃から妻にレディファーストの作法を教え込まれ、小学校高学年の頃には、妻だけでなく近所の主婦達や女の子のお友達にも、大人顔負けの立派な紳士として振舞うようになりました。今も、息子は常に私より母親の味方。記念日には高級バッグなどをプレゼント。(父の日は電話一本だけ)。12年前には西洋人と結婚し、現在は8歳になる孫娘が、レディファーストのすべての恩恵を一身に受けています。

Writer’s Profile

NOBUNAGA
45年前に商社マンとして米国駐在。高度経済成長期にロシア、オーストラリアにも勤務し、日本ブランドの世界展開に取り組む。米国在住の孫娘に会うのが楽しみ。今後は妻と二人、沖縄でゆっくりと過ごす予定。

MERRY
ラテン系アメリカ人。結婚後に日本へ移住。カラオケが好きで、ウニが大好物。日本に40年以上住んでいるが、敬語を使うのは苦手。間違えた時は少しベロを出して笑顔でお詫びすれば、大体許されると思っている。
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