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空手で学んだ武士道精神をアメリカに広めたい

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スポーツを物語る Vol.02
空手で学んだ武士道精神をアメリカに広めたい

by 宮本晋一郎

スポートを物語る

私の実家は武家の家系で、先祖代々伝統を重んじる家庭だった。父親の教育方針は一風変わっていて、喧嘩で負けて帰ってくると、家に入れてもらえない時もあった。やんちゃをしても、自分から手を上げなかった事や弱い者いじめをしなかった事を逆に褒められたりした。
 家族団欒も、昭和の普通の家庭と違い、関節技の取り合いや喧嘩の仕方を練習するなど、ちょっと変わった家庭だった。実家は薪風呂だったので、薪割りで筋力がつき、バック宙などは教えられなくても出来たし、練習もなしで寝技の大会に出場し上位入賞していた。

そんな私に転機が訪れたのは、シカゴ留学である。当時はUFC(※1)の初期、PRIDE(※2)全盛の時代で、色んな所に格闘技の道場があった。しかし、映画の影響を受け過ぎのような道場が多く、私はあちこちの道場に出向いては、有段者を次々と負かし、なかば道場破りのような事を繰り返していた。

そんな時に知人が士道館を紹介してくれた。生意気だった私は、ここでも黒帯数名を負かし、ドヤ顔だった。その時に、後に私の師匠となる松本師範から、
リングに入るよう命じられた。自信満々で師範に挑んだが、結果は肩を外され、鼻を折られ、ぼろ雑巾の様に惨敗だった。

鼻血が噴水のように出て周りが大騒ぎしている中、当の本人はどこか心地よく、気持ちよい充実感が湧いてきた。血まみれでリング上にノックアウトされながら、「自分がやりたいのはこれだ」と確信した。人がやらない、できない事で、社会に貢献したい。それが自分にとっては武道なんだ。”空手という武道を通して、日本の文化である武士道精神を米国に広めたい!“

宮本晋一郎

翌日、心を改め松本師範に頭を下げ弟子入りをした。指導は厳しく、道場での練習後はフィットネスクラブで筋トレ&ランニング。寝技の出稽古にも通った。昇段試験の採点も厳しく、時には試験を中断され不合格になった事もあった。

出会ってから今まで、お褒めの言葉を頂いた事もなく、腐りかけた時もあった。そんな時には、武道の理念「心技体を一体として鍛え、人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する事」を思い出して、稽古に励んだ。

気が付くと、お調子者で飽きやすい性格だった自分が、空手を通して忍耐強くなり、何事にも尊敬の念を忘れない様になっていた。そして弟子入り後10年以上の月日が経ち、松本師範の引退に伴い、師匠との別れが訪れた。

一時は空手を引退する事も考えたが、士道館の創設者である総帥、添野ご夫妻のお力添えもあり、士道館 宮本道場を開設する事が出来た。最初は全く何もないところからの船出だったが、今では、性別、人種、年齢問わず、色々な方々が通ってくれるようになった。

空手は、敬天愛人の精神で礼節を重んじ、挨拶や礼儀作法を通して心身共に強くなり、集中力や忍耐力を身に付け、人格向上に繋がる素晴らしい武道である。これからも、武道を通して多くの人の笑顔が増えるよう、日々精進していきたい。押忍

Writer’s Profile

宮本晋一郎

世界空手道連盟士道館 シカゴ支部長 師範士段3段。実弟は元全日本プロレスの宮本和志。先祖には八幡山(やはたやま)という力士がいる。イリノイ州シャンバーグの道場を拠点に、全米展開を目指し日々空手道に精進している。

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