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フライフィッシングの醍醐味

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スポーツを物語る Vol.03
フライフィッシングの醍醐味

by 山本智

スポートを物語る

フライフィッシングの楽しみは「終わりがない」ことではないだろうか。ただ魚を釣り上げるだけでなく、その過程と自分の成長を感じられることが楽しい。フライ・キャスティングという身体的技術から、魚は何処に潜んでいるのか、捕食物は何かなどの知識、それらに基づくフライ(鳥の羽根や動物の毛などを針に巻き付けて造る疑似餌)の選択、さらに季節や天候の影響まで、全てを注ぎ込んで釣りに挑む。フライ巻きや水生昆虫学に没頭してしまう釣り人も多々いる。全くの初心者にとってはいきなり課題が多く響くかもしれないけれど、一番大切なことは、川・魚・全ての自然環境に触れたい、難関も含めてプロセスを楽しみたい、という気持ちである。基本的な道具と初歩的な知識だけを持って川に通い続ければ、技術も知識も身に付き、釣果もついてくる。

東京農工大学在学時に多摩川支流で鯉を対象に始めたフライフィッシングの楽しみは、国・住む場所・対象魚が変わっても色褪せることはない。フライフィッシングをもっと突き詰めたい、もっと魚を釣りたい、大きい魚を釣りたい、など目標を追いかけ続けたら、知識と技術をより多くの人々と共有したい、とガイドを志すようになった。

広大なアメリカの方が日本国内よりフライフィッシングを始めやすいと思う。基本的な道具を揃えたら、次に必要なものは州ごとのフィッシング・ライセンスの経費だけ。日本式の各河川・地域ごとの漁券や有料管理釣り場は滅多にない。

山本智

近郊の釣りで満足できなくなったら、別の州に遠征釣行を計画すれば、楽しさも経験も倍増する。モンタナ州に住んで20年以上になるけれど、日本とほぼ同じ面積のこの州には、未だに訪れたことのない地域や、釣りたくても簡単に出かけられない河川がたくさんある。

私が住むリヴィングストン周辺にはたくさんの河川があり、またイエローストーン国立公園は車で1時間の距離だ。醍醐味はやはり、手付かずの大自然のど真ん中で野生のトラウト(鱒)に挑戦できる環境だ。公園内では、バイソンなど野生動物に囲まれながら観光したり釣りができる。公園内からリヴィングストンに向かって流れるイエローストーン川とその支流には、原種イエローストーン・カットスロート・トラウトが泳いでいる。この公園の北門からリヴィングストンまでは、パラダイス・ヴァレー(天国のような谷)と呼ばれている。

ガイドという仕事で何よりの報酬は、この素敵な環境の元、釣り人と特別な時間を共有できること。大きなトラウトが釣れた、たくさん当たりがあった、など嬉しいことはもちろん、突然の雷雨に襲われたなども含め、様々なクライアントと接するたび、それぞれの感動があり、どれもが格別だ。

ガイドを10年以上続け、フライフィッシングが仕事になっても、情熱と楽しみを失ったことはない。ガイドとして上達していくためには、目的と課題を持ってホーム・ウォーターでの釣りを続けること。もちろんクライアントに大物を釣っていただきたいけれど、自ら釣ってもやはり嬉しい。

Writer’s Profile

山本智

モンタナ州立大学で修士号を取得後、アメリカ西部在住20年以上。現在はモンタナ州リヴィングストンでフライフィッシングのガイドサービスを経営し、アメリカ各地・日本から訪れるフライフィッシャーをガイドしている。

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