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異世界の扉を開いて「踊りがある人生」へ

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スポーツを物語る Vol.08
異世界の扉を開いて「踊りがある人生」へ

by 野口武

スポートを物語る

フラを踊っている」と告げると、決まってこんなリアクションが返って来ます。まず手で波の動きをしながら、「腰、振ってるの?」とか、「裸で踊るの?」とか、異世界の住人を見るかのような驚きの表情で聞いてくるのです。ほとんどの人にとってフラは、波のハンドモーションで腰をゆらす陽気な踊り、あるいは、南の国の原始的な踊り、という認識のようです。かくいう僕自身も、ついこないだまでは、そんな感じでした。

40歳のとき、仕事での付き合いがあったフラ教室から、「レッスンに通ってみない?」と誘われました。最初は、「踊りなんてとんでもない!」と固辞していました。これまでの人生で、まともに踊ったこともなかったし、「自分はリズム感がないから決して踊れない」と思い込んでいたのです。ましてや、「舞台に立って人前で踊るなんて、恥ずかしくて絶対に嫌だ」と。

気持ちが少し動いたのは、『ハウマーナ』という男性フラの世界をテーマにした映画を観たことでした。ハワイの自然の中で男性たちが踊る戦士のような勇ましい姿や、神が宿る自然への敬意、そしてクム(師匠)との心のつながり、そんなフラの精神性を、とても素敵だなと感じました。

『ナー・マモ・オ・カレイナニ』のカネの仲間たちと野口(前列左)。

異世界に転生するような心持ちでフラ教室に通い始め、いざ踊りに挑戦してみると、まず上半身と下半身を同時に動かす感覚に戸惑いました。まるで油をさしていないロボットのように、自分の体がぎこちない…。体中のこれまで使ってこなかった神経を、ひとつひとつ呼び覚ますような作業でした。

しかし、反復練習で体に動きを覚えさせていくことで、少しずつですが踊りが入って来る感覚がありました。時間はかかりましたが、初めて1曲通しで踊れたときは、「自分でもできるんだぁ」という驚きと共に、新しい扉が開かれたような感動がありました。

フラを始めてから5カ月後、最初の舞台に立ちました。フラ教室(ハラウ)の新年会で、100人以上の先輩達(すべて女性)、下は4歳から上は83歳まで、の視線が舞台に注がれていました。緊張で足がすくむ中、暖かい声援をいただきながら、なんとか踊りきりました。決して上手な踊りとは言えなかったけれど、5人のカネ(男性フラ)の仲間と共に踊った体験は、これまで取り組んできたどのスポーツとも異なる達成感がありました。

5年の歳月が経ち、今では13の曲を踊れるようになりました。ポンコツな我らを太陽のような包容力で包み込み、ご指導いただくクムのもと、毎週のレッスンを続けています。今でも新曲を覚えるのは大変だし、練習もしんどいし、ステージに立つのは緊張します。ではなぜフラを続けるのか? 一度踏み入れると立ち返れない魔力とでもいいますか、そこには、踊ることでしか味わえない、精神と肉体の喜びがあるからです。異世界の「踊りがある人生」を、なんだかんだで、結構、楽しんいでます。

Writer’s Profile

野口武

45歳。新潟県生まれ、埼玉県育ち、東京都在住。編集者・ライターとして、多くの本を手掛ける。これまで野球、サッカー、テニス、ラグビー、マラソンなどを経験し、40歳から踊りの世界へ。現在、フラ歴5年。

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