
カリフォルニア州の文明史の始まりは、約13000年から15000年前。先住民族が当地に生活した痕跡が残っているのだ。16世紀になって、ヨーロッパ人により探検と開拓が始まる。米墨戦争でメキシコが敗北し、1848年にグアダルーペ・イダルゴ条約が結ばれ、アメリカがカリフォルニアを獲得するに至った。

同年1月24日にアメリカ史の土台となる劇的な出来事が口火を切る。農場主ジョン・サッターの使用人ジェームズ・マーシャルがサクラメント東方のアメリカン川で砂金を発見したのだ。これが黄金を求める人々が全土から集結する「カリフォルニア・ゴールドラッシュ」の幕開けとなる。1850年代に掛けて、ゴールドラッシュが終わるまでの間、カリフォルニアの各都市が爆発的な発展を遂げる事となった。
アメリカ大陸横断ハイウェイ、ルート66の「最後の州の最初の町」であるカリフォルニア州のニードルズは、モハベ国立保護区への入り口の砂漠地帯に位置する。夏場の気温は40度以上あり、底なしとも思える暑さで満たされる。人口は約4800人。ラスベガスから約180km、州間高速道路40号とUSルート95号のジャンクションが交差した場所であり、トポックの南東約5kmのモハベ山脈にある。ピナクル火山の山頂の尖った岩が「針」のようであるということで、その名が付けられた。ルート66とサンタフェ鉄道が通った事により、自動車と鉄道の両面から繁栄をした歴史を持つ。ここにあるカルティーズキャンプのサービスステーションは1925年頃に建てられたもので、ルート66を旅する者にとって非常に人気が高いキャビンコートであった。傑作映画として名高い『イージーライダー』や『怒りの葡萄』などのロケ地としても知られており、多くの映画ファンが足を運んでいる。


映画の話をすれば、1987年に映画『バグダッド・カフェ』が制作され、関連するテレビ番組の放映もあり、ルート66の名所として一気に名を上げた街もある。街の名はバグダッド。カリフォルニア州のサンバーナーディーノ郡モハベ砂漠にあり、ニードルズから西へ車で約1時間の場所に位置する。当地は1912年10月3日から1914年11月8日まで雨が降らなかった、乾燥の連続記録があり、壮大な景色と共に過酷な気候も有している。町の南には花こう岩山であるグラニテ・マウンテンがあり、北には金山脈であるブリオン・マウンテンがある。1883年の設立後、長く繁栄を極めたが、ゴールドラッシュが下火となり、時代と共に徐々に役目を終えて衰退。1932年に建造された小さな飛行場も1958年までに放棄。1973年バイパスとしてインターステートI-40が開通すると、旅行者と居住者を失ってゴーストタウン状態となった。
そして、そこから先の展開へ。映画とテレビ番組により注目された当地は再び名所としての息を吹き返し、1995年には映画の設定に則した「バグダッド・カフェ」が改名により誕生。世界中から観光客が訪れる事になった。
歴史や文化の彩りが各所に香るカリフォルニア。旅は続く。
※現在は、取材当時と状況が異なる場合がありますので、現地へ行かれる際は各自で最新情報の確認をお願いします。
Writer’s Profile

関連記事
by ルーバル朋子 スペインの宣教師がカリフォルニアで最初のミッションを建てたことから、サンディエゴのオールドタウンはカリフォルニア生誕の地と呼ばれていることをご存知ですか? ミッションはカリフォルニアに21ヶ所建てられ […]
過日、ネットフリックスで『平家物語』のアニメを観たという知人の子供から「壇ノ浦ってどこにあるの?」と尋ねられて答えに窮した。歴史の散策探訪に興味があり、壇ノ浦合戦場の跡地にも実際に足を踏み入れている筆者がこれに即答できな […]
この頃は羽田空港に降り立つと、コロナ禍の収束を感じさせる多くの観光客の姿が見受けられます。隣に座った乗客も、東北を巡るのだと言って嬉しそうに笑っていました。東北の旅と言えば、ひとつ思い出すのが秋田の旅。農業王国として知ら […]
金沢は東京から新幹線で一本。ばつぐんのアクセスで、気軽に足を運ぶことのできる素敵な場所。もともと加賀藩の城下町として豊かに栄えた近江の街とあり、いまも明るくにぎやかな名所が揃っています。 まず、金沢駅に着くと出迎えてくれ […]
by 藤本みどり アメリカ北東部からカナダまで南北に走るアパラチア山脈。 長さは約2400キロで、国立公園が多く、美しい景観が特徴。 2003年にノースカロライナ州に引っ越して瞬く間に20年が過ぎ、時間の流れの速さに驚く […]
by 光山幸恵 ロッキー山脈に向かってドライブすると、壮大な景色を楽しめます。 肺活量を鍛えるのにアメリカで一番適した場所。コロラド州デンバーは通称「マイル・ハイ・シティ」と呼ばれ、標高1マイル(1600m)に位置してい […]
by オーラリー美紀 映画『君に読む物語』のロケ地”Cypress Gardens”。人の手が加えられていない美しい沼地を、ボートでゆっくり堪能できる。 私の住むサウスカロライナ州チャールストン、日常の風景といえば、州の […]
by 御早コーギー かつて刑務所として使用されていたOhio State Reformatory。左右対称に設計された外観はヨーロッパの古城のように綺麗。 オハイオ州はアメリカ中西部に位置し、五大湖の1つであるエリー湖に […]
ルート66─通称”マザーロード”。古き良きアメリカ文化を優しく抱擁する、母なる道。1926年から1985年までイリノイ州シカゴ~カリフォルニア州サンタモニカまで8つの州と300以上の町を繋げていた […]
九州でいちばん南にある鹿児島は、日本が新しく歩み出した幕末から明治の時期に、とても活気があった場所だ。歴史・文化・絶景・食と、旅のいろいろな魅力がギュッと詰まっているわけだけど、特に温泉の数が多い。なんと、鹿児島は温泉地 […]
日本の整った鉄道網や空路が私たちをあらゆる名所に連れて行ってくれる。それは観光だ。それとは別に、たっぷり時間をかけて遠い道のりを移動する旅もある。それは冒険だ。かつて陸の孤島と呼ばれた深い山々に囲まれた岐阜の山岳地、「合 […]
深まる秋に特別な読書をしようと考え、吉川英治が仕立て直した『平家物語』の世界を追ってみた。すると、前半部の主人公である平清盛が繰り返し「熊野」の名を挙げていることに気が付いた。和歌山には「熊野三社」と呼ばれる三つの大きな […]
おすすめ記事
九州南部のとある漁師町。県全体の7割もの漁獲量を誇り、天然の良港に恵まれた町がある。最寄りの駅からは、峠を越えて、くねくねしたリアス式海岸沿いの道を車で走らせること30分。穏やかな海に囲まれた漁港のそばで、何隻もの漁船が […]
海外で暮らすと空気が読めなくなる…!? パックンに相談です。先日、5年間のアメリカ生活を終えて日本に帰国したのですが、海外生活が長かったせいか日本人特有の「空気を読む」ことが難しくなっています。会食中に「最後の一個残し」 […]
まるごとレモンでビタミンチャージ! ビタミンCの代表選手とも言えるレモン。レモンの爽やかな酸味と香りは、お料理を引き立たせてくれるだけでなく、風邪の予防など健康に嬉しい栄養素も含まれています。レモンは色々なお料理に使える […]
私は、所属しているU.S. armyからの辞令で、テキサスにある基地に転勤となり、2020年に3年の予定でコロラド州のデンバーからテキサス州コーパスクリスティに越してきました。コーパスクリスティはテキサス州で8番目の都市 […]
「頭金ゼロでも、利息が高いけど購入可能らしい」というのは本当ではありません。自宅購入の場合、頭金は最低3%必要。投資物件なら25%は欲しいところです。毎月の住宅ローンの支払いは、①元本と②利息、③固定資産税と④家の保険の […]
by サイラス・リュウイチ・トラン サッカーは、多くの人に開かれたスポーツです。私は、プロサッカーチームのないハワイで生まれ育ちましたが、幼少の頃からボールを必死に追いかけて、プロサッカー選手になる夢を叶えました。そして […]
新着記事
日本ではオレオレ詐欺などに代表される、電話を使った詐欺。アメリカにもいっぱいあります。むしろ頻度は米国の方が酷いかも?引っ越してきたばかりの頃は、状況が理解できず詐欺の被害に遭ってしまう方もいらっしゃるので注意が必要です […]
過日、ネットフリックスで『平家物語』のアニメを観たという知人の子供から「壇ノ浦ってどこにあるの?」と尋ねられて答えに窮した。歴史の散策探訪に興味があり、壇ノ浦合戦場の跡地にも実際に足を踏み入れている筆者がこれに即答できな […]
石田純一 1954年東京都生まれ。1972年NHKドラマでデビュー。80年代には、数々のトレンディードラマに出演し、絶大な人気を得る。ドラマや舞台、映画など多方面で活躍。2021年に始めたYouTubeチャンネル「じゅん […]
by ルーバル朋子 スペインの宣教師がカリフォルニアで最初のミッションを建てたことから、サンディエゴのオールドタウンはカリフォルニア生誕の地と呼ばれていることをご存知ですか? ミッションはカリフォルニアに21ヶ所建てられ […]
60歳をこえると、少しの風邪が平気で長引くようになる。発熱と咳、なかなか治らんなぁと思っていたら軽い肺炎だった。少し体調が良くなったかと思えば、今度は集中豪雨。海がしけては漁に出られない。体調と天候の悪化がかぶると、漁師 […]
女子神職として初めての祭事で失態を犯してしまった私は、当日はさすがに落ち込んだものの、そこから心身ともに逞しく成長していった。ある意味初めに失敗したことで、もう恐れるものは何も無いという気持ちになったのだ。 そのうち祈祷 […]
by Satsuki 仕事を辞めて駐在妻になる! そう決めたのは私自身なのに・・・ だんだん失っていく自信と自分に対するアイデンティティ。 これから先、私の人生はどうなるんだろう。 不安に押しつぶされそうになっていたのは […]
左右の絵では違うところが 10 個あります。全部見つけられるかな? 答え 問題に戻る
新型コロナウイルスは2023年現在、かつてのような深刻な脅威ではなくなっています。その理由の一つには、迅速なワクチンの開発があります。かつて多くの命を奪った病気を、ワクチンによって撲滅させた偉大な医学者を紹介します。 「 […]