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最後の州にある始まりの街へ

Route66に魅せられて Vol.13
最後の州にある始まりの街へ
by Kanazawa Ken
Route66に魅せられて

カリフォルニア州の文明史の始まりは、約13000年から15000年前。先住民族が当地に生活した痕跡が残っているのだ。16世紀になって、ヨーロッパ人により探検と開拓が始まる。米墨戦争でメキシコが敗北し、1848年にグアダルーペ・イダルゴ条約が結ばれ、アメリカがカリフォルニアを獲得するに至った。

同年1月24日にアメリカ史の土台となる劇的な出来事が口火を切る。農場主ジョン・サッターの使用人ジェームズ・マーシャルがサクラメント東方のアメリカン川で砂金を発見したのだ。これが黄金を求める人々が全土から集結する「カリフォルニア・ゴールドラッシュ」の幕開けとなる。1850年代に掛けて、ゴールドラッシュが終わるまでの間、カリフォルニアの各都市が爆発的な発展を遂げる事となった。

アメリカ大陸横断ハイウェイ、ルート66の「最後の州の最初の町」であるカリフォルニア州のニードルズは、モハベ国立保護区への入り口の砂漠地帯に位置する。夏場の気温は40度以上あり、底なしとも思える暑さで満たされる。人口は約4800人。ラスベガスから約180km、州間高速道路40号とUSルート95号のジャンクションが交差した場所であり、トポックの南東約5kmのモハベ山脈にある。ピナクル火山の山頂の尖った岩が「針」のようであるということで、その名が付けられた。ルート66とサンタフェ鉄道が通った事により、自動車と鉄道の両面から繁栄をした歴史を持つ。ここにあるカルティーズキャンプのサービスステーションは1925年頃に建てられたもので、ルート66を旅する者にとって非常に人気が高いキャビンコートであった。傑作映画として名高い『イージーライダー』や『怒りの葡萄』などのロケ地としても知られており、多くの映画ファンが足を運んでいる。

映画の話をすれば、1987年に映画『バグダッド・カフェ』が制作され、関連するテレビ番組の放映もあり、ルート66の名所として一気に名を上げた街もある。街の名はバグダッド。カリフォルニア州のサンバーナーディーノ郡モハベ砂漠にあり、ニードルズから西へ車で約1時間の場所に位置する。当地は1912年10月3日から1914年11月8日まで雨が降らなかった、乾燥の連続記録があり、壮大な景色と共に過酷な気候も有している。町の南には花こう岩山であるグラニテ・マウンテンがあり、北には金山脈であるブリオン・マウンテンがある。1883年の設立後、長く繁栄を極めたが、ゴールドラッシュが下火となり、時代と共に徐々に役目を終えて衰退。1932年に建造された小さな飛行場も1958年までに放棄。1973年バイパスとしてインターステートI-40が開通すると、旅行者と居住者を失ってゴーストタウン状態となった。

そして、そこから先の展開へ。映画とテレビ番組により注目された当地は再び名所としての息を吹き返し、1995年には映画の設定に則した「バグダッド・カフェ」が改名により誕生。世界中から観光客が訪れる事になった。

歴史や文化の彩りが各所に香るカリフォルニア。旅は続く。

※現在は、取材当時と状況が異なる場合がありますので、現地へ行かれる際は各自で最新情報の確認をお願いします。

Writer’s Profile

Kanazawa Ken
Kanazawa Ken
東京都向島出身、ラスベガス在住。2011年に富士フイルム・フォトコンテストで銀賞を受賞しプロカメラマンとしてデビュー。以降、数々のメディアに写真を提供する唯一無二のルート66大陸横断スペシャリスト。

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