
九州でいちばん南にある鹿児島は、日本が新しく歩み出した幕末から明治の時期に、とても活気があった場所だ。歴史・文化・絶景・食と、旅のいろいろな魅力がギュッと詰まっているわけだけど、特に温泉の数が多い。なんと、鹿児島は温泉地が約100カ所もあって、1日に2億2500万リットルものお湯が地上に出ているというのだからオドロキだ。温泉郷も、主な場所が4つもある。これはもう、旅好きとしては制覇するのがロマンというものだろう。

煙の立ち上っている桜島が目に入ると、ほんとうに鹿児島に来たんだなぁと実感する。まず向かったのは、鹿児島中央駅から車で1時間半ほどの距離にある霧島温泉郷。日本神話に登場する高千穂峰のすぐそばにある。坂本龍馬と妻おりょうが新婚旅行に来た場所だとも言うから、しみじみと歴史を感じる。ここで特に有名な場所は、霧島ホテルの「硫黄谷庭園大浴場」。九州屈指の湯量を誇り、「とにかく広い」のひとことに尽きる。温泉というよりまるでテーマパークかと思うぐらいにぜいたくな空間で、もちろんお湯も効能たっぷり。日ごろのストレスが一気に吹き飛ぶ思いだ。
次の温泉郷は、そこから車で20分ほどの場所にある、霧島神宮温泉郷。霧島山の麓にあって、標高は800m。この温泉郷の中で特にユニークだとされているのが、美肌効果バツグンの泥湯がある「さくらさくら温泉」。静かな林に囲まれた天然の露天風呂は、景色だけでも風情ばつぐん。泥の湯は全国でもとてもレアなので、ぜひとも立ち寄りたいところ。霧島神宮のお隣には、和菓子の名店「薩摩蒸氣屋 霧島民芸村店」がある。ここでは全国的に有名な薩摩の銘菓「かるかん」「かすたどん」などが売られている。かすたどんはフワフワした生地にたっぷりのカスタードクリームが詰まった逸品で、和スイーツ好きならぜったいにかかせない。

続けて西へ30分ほど車を走らせると、妙見・安楽温泉郷がある。サラサラと流れる天降川、優しく生い茂った緑の山、大自然に囲まれてなんとも気持ちが穏やかになる。ここは炭酸水素塩泉という泉質で、肝臓病・痛風・糖尿病などに効くと言われている。この温泉郷内の「妙見田中会館」はシャワーからも温泉がかけ流しにされていて、まさに温泉づくし。おどろくべき湯量の豊かさがうかがえる。
ラストは南へ10分ほどの場所にある日当山温泉郷だ。鹿児島最古の名泉がある「数寄の宿 野鶴亭」の浴場は西郷隆盛も訪れていたという歴史あり。露天風呂はこれまた日本風情たっぷりで、夜に入ると心がノビノビと解放される。この旅館は数寄屋造りと日本庭園の中庭がとても見事で、郷土素材をつかった懐石料理がまさに絶品。自社牧場の牛肉のしゃぶしゃぶや豆乳豆腐が本当に新鮮でおいしい。日帰りでも立ち寄れるが、時間があれば宿泊をしてゆったりと時間を過ごしたい。
温泉王国、4つの温泉郷をめぐるロマン旅。あなたもいかが。
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