
ルート66─通称”マザーロード”。古き良きアメリカ文化を優しく抱擁する、母なる道。1926年から1985年までイリノイ州シカゴ~カリフォルニア州サンタモニカまで8つの州と300以上の町を繋げていた、全長3800kmにも及ぶ伝説のハイウェイ。高速道路としての機能を終えた後も国指定景観街道として大きな存在感を示し、数多くの映画や小説、音楽、CM、PVの中に登場し続けている。今もアメリカのみならず、世界中の人々に愛され続ける道だ。いよいよ、この壮大な旅も終着点を迎えようとしている。カリフォルニア州、ラストランだ。
ラスベガスから車で約2時間半。カリフォルニア南東のアンボイには有名なロイズカフェ&モーテルがある。7000年前に誕生したコンデア火山のアンボイ・クレーターが有名だ。そこから北西に約1時間走ると、ラドロー・カフェがある。廃墟が点在する砂漠の真ん中、ガラス張りのモダンな建物だ。ゴールドラッシュのスタート地点となったバグダッド・チェイス鉱山が近い。

そのラドロー・カフェから西へ1時間半に位置するエルマーのボトルツリーランチは、芸術家エルマー制作のボトルを用いたリサイクル・アートだ。太陽の位置に応じてボトルジャーには様々な光が反射し、風が吹く時は金属の風車が音を奏でる。そこから南西に約30分。
世界的に有名なルート66モーテルがそこにある。広い駐車場や庭にアメリカのクラシックカーが展示してあり、当時のルート66を思わせるコレクションが充実している。
続けて南西に約30分移動するとビクタービルの街がある。先住民族が1万年前から住んでいた場所であり、第二次世界大戦中の1941年から43年までは陸軍飛行場が設けられていた。約40分南下するとリアルトの街がある。ここを走る州間高速道路210号線は映画『三つ数えろ』『トランスフォーマー』等、映画やテレビ番組の撮影ロケ地として何度も登場している場所だ。


この街の北西にはサンバーナーディーノ山脈とサンガブリエル山脈を隔てる自然の玄関口であるカホンパス、西にはマクドナルド発祥の地のサンバーナディーノと、そのマクドナルドのレアなゴールデンアーチがあるラバーンがある。開拓者を讃える12体のマドンナ彫像があるのはアップランド、そしてマリリン・モンローが亡くなる数週間前に立ち寄ったランチョクカモンガ、歴史的建造物アズテックホテルとオークパークモーテルが有名なモンロビア、更にはギャンブルとスポーツで栄えたアーケーディア、ルート66最後のドライブインシアターがあったアズサ、歴史的な多目的球技場があるパサデナ、といった名所が続く。
パサデナの街から南西に約20分走ると、いよいよルート66の長い旅路がクライマックスを迎える。西海岸を代表するロサンゼルスがそこにある。「ロサンゼルスの自由の女神」と評されるチキンボーイが明るく出迎えてくれた。映画産業の中心地ハリウッドは、現在も変わらず世界中に多彩な影響を与え続ける文化的アイコンとなっている。
車を降りて、映画『ラ・ラ・ランド』でロケ地となったコロラド・ストリートを歩く。A little chance encounter could be the one you’ve waited for.(ちょっとした出会いがあなたの運命を変えるかもしれない)という作中の台詞を思い出した。ルート66の旅には人・文化・歴史など様々な出会いがあって、自分の世界観を大きく変えてくれる。(了)
※現在は、取材当時と状況が異なる場合がありますので、現地へ行かれる際は各自で最新情報の確認をお願いします。
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