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刺激に溢れた、時に優しくも厳しい米国社会

駐夫として暮らした米国 Vol.01
刺激に溢れた、時に優しくも厳しい米国社会
by 小西一禎
駐夫として暮らした米国

今、この原稿を沖縄県名護市のビーチリゾートホテルで書いている。米国から日本に本帰国して、1年4カ月あまり。本格的な宿泊旅行は今回が初めてだ。思えば、衝撃的な告白を妻から聞かされ、バケーション三昧どころじゃなくなったのも、沖縄のホテルだった。

「『アメリカまで付いてくる』って言ったよね。決まりそうだから、よろしくお願いします」。

2017年の夏。ホテルのプールサイドで、4歳の長女、2歳の長男が楽しそうに水と戯れているのをのんびりと眺めていたとき、米国転勤が本決まりになりそうだと「通告」された。一緒に行く、とは確かに伝えていたものの、まさか実現するとは思っておらず、自分事として捉えていなかった。

当時の私は、大手メディアの政治記者。平日は朝から晩まで、永田町の第一線で政治家を取材し、原稿を執筆、週末も政治家に同行して地方出張を繰り返す、まさに仕事漬けの日々。ウチのことは殆どを妻に任せていた。夢も希望も叶った、政治記者の仕事は充実していた。

 

ただ、心のどこかで、こうした日々がこの先も続くのは不安だった。体力、気力はいつまで持つのか。このまま、一緒に過ごす時間も少ないまま、子どもたちは大きくなってしまうのか。内心では、何かしらの変化を求めていたのかもしれない。

 

帰京後、逡巡した結果、2児とともに妻に同行すると決断した。決め手は、①家族は一緒にいた方がいい ②妻のキャリアを大切にしたいし、海外生活は必ず子どものためになる ③会社の同行休職制度活用で失職の心配がない上、新たな挑戦となる―の3つ。そして、17年12月に渡米した。

駐夫として暮らした米国 Vol.01

海外在住の皆様にとって、駐在員妻=駐妻は、普通に耳にするワードだろう。では、駐夫とは何ぞや。駐在員の夫=駐夫と、要はジェンダーの入れ替えに過ぎないが、単純に「過ぎない」と言い切れない側面があるのは、論をまたない。古いデータ(2008年)で恐縮だが、日本人の海外派遣勤務者のうち、女性はたった1.0%。このトレンドは、今も劇的に変わっているとは考えにくく、昔も今も、駐在員の世界は男性が圧倒的に多いという事実がうかがえる。

その裏返しで、駐在員同行者の世界は女性ばかり。パートナーが海外赴任となれば、夫の勤務先など周囲から「妻は同行するのが当然」と思われる。共働き世帯が半数を超えて久しく、男性も女性もバリバリ働く時代に、退職や休職を余儀なくされ、自らのキャリアを泣く泣く中断している女性は少なくない。一方で、女性自身が駐在員となり、夫が同行するケースも次第に増えている。

背景には、女性の社会進出に加え、私が会社初の男性活用となった「同行休職制度」が官民で広がっていることがある。女性だけに偏っていたキャリアの中断は、男性にも訪れている。

駐夫・ジャーナリストが見た米国は、時に包み込むように優しく、時には鬼のように厳しく、様々な面を突きつけた。ただ、幾多のチャレンジはすべてが刺激に溢れていた。

Writer’s Profile

小西一禎
小西一禎
ジャーナリスト。慶應大卒。元共同通信社政治部記者。17年、妻の米国赴任に伴い休職、渡米。在米中退社。米コロンビア大客員研究員を歴任。各メディアへの寄稿・取材歴多数。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。
Twitter:chu__otto
Instagram:ponpyonpyon

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ジャーナリスト。慶應大卒。元共同通信社政治部記者。17年、妻の米国赴任に伴い休職、渡米。在米中退社。米コロンビア大客員研究員を歴任。各メディアへの寄稿・取材歴多数。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。