
アメリカで外食して最初に面食らうのは、「メニューに写真が一切ない」ということですね。高級レストランの話ではありません。庶民的なダイナーであっても、メニューは全て文字ばかり。アメリカ人はあれを読んで本当にどんな料理が来るのか分かるのだろうかと、いつも不思議になります。
「アメリカでは写真と実物が違うと訴えられるから」とか「写真を掲載するのにかかるコストがもったいないから」とか、色々理由は考えられます。でも、僕はシンプルに「アメリカ人は文字が大好きなんだろうな」そして「文字を読んでイメージする能力が高いんだろうな」と思っています。
これはメニューの話だけではありません。例えばトラベルガイドを見てみましょう。日本のガイドブックを開くと、紙面の大部分は現地の写真で埋め尽くされ、見ているだけでワクワクして旅行に行きたくなってきます。一方、アメリカのガイドブックは一面文字だらけ。全く楽しくありません。お料理のレシピ本も、編み物の本も、基本的には文字だけで構成されています。
仕事でも同様の傾向があります。アメリカ人の作る資料は基本的に文字だらけです。日本人なら図形などを使ってビジュアルで分かりやすく説明するような場面であっても、かたくなに文字だけで攻めてきます。数値データについても、グラフより数字の表を好む傾向があるように感じます(Amazonではそうでした)。
「アメリカ人の作る資料は」と言いましたが、そもそもアメリカ人は日本人ほど資料を作りません。日本にいた頃、僕は社内のちょっとした打ち合わせであっても、パワポで簡単な資料を作って臨んでいました。その方が意図がスムーズに伝わるので、結果的に効率が良かったからです。
しかし、アメリカ人でそんなことをしている人は見たことがありません。彼らは全て「喋り」で何とかしようとする傾向があります。基本的に、「喋れば全て伝わる」と思っているし、直接話すことができない場合には「文字で説明すれば全て伝わる」と思っている。そんなフシがあります。
そんな状況下で、日本人はどのように振る舞うべきなのか。僕も以前はアメリカ人の真似をして、資料無しで何とかしようとしてみたり、文字だらけの資料を作ってみたりしました。が、悲しいかな僕の英語力ではそんなやり方で意図を正確に伝えることはできず…。
そこで開き直って、日本で鍛えたパワポ力をフルに発揮し、言葉だけに頼らずできる限り図をふんだんに交えて説明するようにしたところ、かなり正確に意図を伝えることができるようになりました。むしろ「お前の資料、めっちゃ分かりやすいな!」とさえ言ってもらえるように。コミュニケーションは相手に伝わってナンボです。周りに流されず、自分に合ったやり方を見つけるのがいいかと!
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