
この連載ではお伝えしていなかったかもしれませんが、ワタクシ、去年の8月にAmazonを退職し、現在はカリフォルニア州に本社を置くスタートアップ企業でフルリモートで働いております。Amazonはとても良い会社でしたが、会社の規模が僕にはちょっと大きすぎました。自分の仕事が会社の成長に与える影響があまりに小さすぎることに虚しさを覚え、自分が会社により大きなインパクトを与えられる環境を求めて、4年半勤めたAmazonを飛び出したのでした。で、そんなAmazonから、最近ちょいちょい「在職中より1つ上の職位で、Amazonに戻ってきませんか?」というメールが届くので、それについて思ったことを2点ほど書きたいと思います。
1つ目は、「出戻りがそんなに奨励されてるんだね」ということ。日本の企業では、一度退職した社員が同じ会社に戻る、いわゆる「出戻り」という行為は、一般的にはあまりポジティブに捉えられていません。日系企業から外資に転職した僕の友人が、レイオフにあったので元の会社に戻ろうとしたところ、「ずっと会社に残っていた社員との間に不公平が発生するので、元の部署には戻せない。子会社ならまだやぶさかではない」と言われたとか。
一度外に出て他の会社で新しい知識やスキルを身につけ、それでも元の会社に戻って来たいという愛社精神を持っている人材なんて、めちゃくちゃバリュー高いと思うんですが、なかなかそう簡単には行かないようです。ちなみにこの友人は、その後も就職活動を続け、その分野では誰もが憧れるアメリカ企業からオファーをゲットし、見事にアメリカ就職を決めたようです。元の日本企業は、変なことにこだわって非常に大きな魚を逃してしまいましたね…。
2つ目は、「出戻り昇進は本当だったんだね」ということ。僕がAmazon在職中に、メンターに「そろそろ昇進したいんですが、どうしたらいいですかね?」と相談したところ、メンターからは「社内で今の職位から上に上がるのは非常に難しい。一度退職して上の職位のポジションで入り直した方がはるかに簡単だよ」とアドバイスされました。当時は「なんじゃそりゃ」と思いましたが、最近Amazonから届くメールを見る限り、あの話は本当だったのかと納得せざるを得ません。
Amazon在職中は昇進なんて1ミリの気配も無かったのに、退職した途端にこの手のひら返し…。アメリカで暮らしていると、「ネットでも保険でも、契約は頻繁に見直せ」とはよく言われますが(長く契約していると割高になってくる)、どうやら雇用契約すらも、アメリカでは頻繁に乗り換えた方がお得なようです。どうりで、LinkedIn等を見ていると、みんな1~2年でコロコロ仕事を変えているわけですね。日本で「一所懸命に一生懸命」の美徳を刷り込まれてきた自分としてはまだ抵抗感はありますが、アメリカでサバイブすべく、アメリカ流も上手く取り入れていきたいと思います!
Writer’s Profile

関連記事
前回に引き続き、この春に都内の大学院で修士課程を無事修了したのにあたり、提出した修士論文「配偶者の海外赴任に同行した男性の意識変容とキャリア設計〜駐夫の帰国前後を中心事例として〜」について、取り上げたい。 駐夫経験者10 […]
漁師の仕事は夕暮れ前から始まる。日没が早い冬は、15時になると妻のサキが弁当づくりに取りかかるが、なにやら頭を抱えている。私の弁当のおかずを何にするか悩むのだという。 「昨日の残りでん入れときゃよかろうが。家にあるもんで […]
九州南部のとある漁師町。県全体の7割もの漁獲量を誇り、天然の良港に恵まれた町がある。最寄りの駅からは、峠を越えて、くねくねしたリアス式海岸沿いの道を車で走らせること30分。穏やかな海に囲まれた漁港のそばで、何隻もの漁船が […]
男性のキャリア中断が一般的ではない日本社会において、帰国後の駐夫はキャリアを再構築するにあたって、極めて不利な状況に置かれるのではないか――。 今春、帰国直後の2021年4月から通っていた都内の大学院で修士過程を修了した […]
2月上旬から中旬にかけての1週間あまり、ワンオペ育児を経験した。妻の国外出張を受けたもので、2年前の本帰国後、子ども2人との生活は初めて。米国時代、幾度となく味わったワンオペは、常に不安でヒヤヒヤものだった。ところが、今 […]
本稿執筆時点では、米国テック業界ではいまだにレイオフの嵐が吹き荒れておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?何故かそんなレイオフ真っ最中の会社からも転職のお誘いが来たりして、世の中って不思議だなと思っています。外か […]
年に一度のアレの時期がやって来ましたね。アメリカで働く以上、避けては通れないアレ。そう、タックスリターンです。「タックスリターン? なにそれ美味しいの?」と戯言をのたまっているあなたは、駐在員様でしょうか? 僕にもそんな […]
みなさん、年末にアメリカで就職活動をしたことはありますか? 僕は(不本意ながら)あります! 今回は、いきなり結論から書いてしまいますが、「年末のホリデーシーズンにアメリカで就職活動するのは極力避けた方がいいよ」というお話 […]
米国で暮らしてみて、何を吸収し、最も良かったことは何か? 前回(1月号)で挙げた3項目のうち、持ち越しとなった残る2つを引き続き紹介したい。2つ目は「自らが、外国人かつ駐夫というマイノリティーな存在となり、社会的弱者への […]
あけましておめでとうございます。 さて、月日の流れは早いもので、この春で帰国してから2年が経とうとしている。米国で暮らしてみて、何が一番良かったか。何を吸収したのか。米国在住中、一時帰国時、本帰国後と周囲からお約束の如く […]
おすすめ記事
「10秒チャージ」というワード、耳にしたことありませんか? 日本では新たなカテゴリーとして広く認められた“ゼリー飲料”がますますその市場を拡大しています。 ドリンクでもありスナックでもあるゼリー飲料、そのパイオニアである […]
私は、所属しているU.S. armyからの辞令で、テキサスにある基地に転勤となり、2020年に3年の予定でコロラド州のデンバーからテキサス州コーパスクリスティに越してきました。コーパスクリスティはテキサス州で8番目の都市 […]
サンフランシスコに赴任して間もない頃。日本とアメリカの働き方の違いには、色々と戸惑うことも多かったです。中でもまず驚いたのが、「アメリカ人、全然残業しないな」ということでした。 僕が新卒で入ったのは、激務で有名な外資系コ […]
自分のお家、借りるのと買うの、どっちがいいの?という話をしたいと思います。 賃貸の場合、家賃は物価の上昇と共に継続的にアップします。年間4%の上昇だと、10年で約1.5倍にもなります。コロナのインフレで、実際それ以上の値 […]
パプリカの色の違いが気になったことはありませんか? パプリカが好きな方は、味の違いにも気がついていらっしゃるはず。ではどうしてこの色の違いが出てくるのか、味や栄養面も合わせて考えてみたいと思います。 *ピーマンとパプリカ […]
新着記事
下がったお尻は上がります! 3ヶ月でも上がってくる!年齢に関係なく上がってくる! 1 両手を前に真っ直ぐ立ち、片方の足のつま先を反対の足のカカトより10㎝ほど後ろに軽く置く。ダンベルがあるなら同じ位置に持っても良し。 2 […]
このライフスタイルが健康にいい!この製品が便利! そんな主張をする人たちは世にあふれています。ところが、自らのその主張を盛大に反証して死んでしまった、まことに残念な人たちがいます。 セグウェイ社のオーナー、セグウェイ運転 […]
お金がある=幸せ? コロナ禍による経済の低迷、その上に燃料費の高騰、物価の上昇、そして海外の銀行の破綻など…。“経済の不安のフルコース”と言わんばかりに、様々な出来事が世の中で起こっています。こんな時代だからこそ「お金と […]
アメリカでは区切りの5月、長い夏休みが始まりますね。日本のコロナ禍も落ち着き、久しぶりに一時帰国される方も多いと思います。今回は、日本で購入したい薬についてお伝えします。薬剤師の私が買ってくる薬、よかったら参考にされてく […]
何か言ってもなかなか聞いてくれない。そんなことないですか? 「使ったものは片付けて」「物を出しっぱなしにしないで」そんな日常的なことだけれども、毎回毎回言っていると親の方が疲れてしまうし、なんでわからないのだろう…と思う […]
これは恋? それともセクハラ? 某州でコンサルの仕事をしています。未婚です。職場にいる20歳近く年齢が離れている後輩(アメリカ人男性)から告白めいた言葉を言われています。「僕は年上が好き」「コロナで出会いがない。出会った […]
まるごとレモンでビタミンチャージ! ビタミンCの代表選手とも言えるレモン。レモンの爽やかな酸味と香りは、お料理を引き立たせてくれるだけでなく、風邪の予防など健康に嬉しい栄養素も含まれています。レモンは色々なお料理に使える […]
by サイラス・リュウイチ・トラン サッカーは、多くの人に開かれたスポーツです。私は、プロサッカーチームのないハワイで生まれ育ちましたが、幼少の頃からボールを必死に追いかけて、プロサッカー選手になる夢を叶えました。そして […]
日本では最高に盛り上がったWBC。栗山監督のシナリオ通りに、侍ジャパンがスター軍団アメリカを見事に封じ込めて勝利となりました。携帯などを扱えない高齢者もテレビ前に集まり、視聴率もひさびさに爆上がり。 今回見ていて思ったの […]
物事には、敏感に反応したり、様々な場面で反応が早い方が良いとされていますよね。例えば、会社内で人より先に何かをするには、まずは気づくことが大切で、その気づきが早いと行動も早くなり、「気の利く人」「仕事のできる人」となるの […]