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添い寝を嫌がるわが子に成長を実感、帰国後初のワンオペ

駐夫として暮らした米国 Vol.07
添い寝を嫌がるわが子に成長を実感、帰国後初のワンオペ
by 小西一禎
駐夫として暮らした米国

2月上旬から中旬にかけての1週間あまり、ワンオペ育児を経験した。妻の国外出張を受けたもので、2年前の本帰国後、子ども2人との生活は初めて。米国時代、幾度となく味わったワンオペは、常に不安でヒヤヒヤものだった。ところが、今回のワンオペはだいぶ様相が異なった。在米駐妻、駐夫にも参考になる点が多いと思うので、紹介したい。

3年3カ月の在米生活で、妻の海外出張はただただ恐怖だった。いや、出張が恐怖というよりも、ワンオペが恐怖だった。渡米時は、長女、長男とも未就学児。米国で暮らし始めて、9カ月目で訪れた日々は苦闘の連続だったのを思い出す。夏休み最終盤の当時、日中はプールやショッピングモール、広々とした公園に連れて行き、父との時間を楽しんでくれたものの、夜になるとママがいない現実に直面する。最初の3日間は、激しく泣き叫び、寝かしつけが大変だった。

雪深いニュージャージー州の自宅で、雪かきをする子どもたち

州の取り決めで、子どもだけを自宅に残すことはできない。幼子が、高熱を出したりしたら、どこのアージェント・ケアに連れて行き、何を持って行くかなど脳内シミュレーションを重ねていた。周囲に頼れる人はおらず、何から何まで自力で完結する必要があった。その時の運転に備えて、楽しみの晩酌は見送り。子どもが完全に熟睡モードに入ったのを確認し、何とかアルコールにありつけた。

再び、ベッドに戻り、長女、長男と添い寝する。どの親も同じだろうが、わが子の寝顔は最高に可愛い。そんな幸せな時間を、独り占めできているかと思うと、疲れも吹っ飛んだものだ。学校が始まると、習い事を含め、車での送迎がタスクに加わった。それでも、朝から学校に行ってくれるだけで、自分の充電時間を確保でき、休息に充てることができた。妻が出張から帰米すると、ようやく肩の荷が下り、心底ホッとする瞬間が訪れた。

回を重ねるたびに、父子ともどもワンオペのコツを掴めるようになり、子どもが泣き叫ぶことは少なくなった。良好な関係が構築できていたママ友との会話で、ふと「今、ワンオペ中なんです」と漏らすと、彼女たちがプレイデートに誘ってくれたり、夕食に招いてくれたりするようになった。反対に、わが家にご招待して、大人たちは飲んだくれたこともあった。新学年スタート直後の恒例行事、バック・トゥー・スクール・ナイトの時、子ども2人を預かってくれた。今、思い返すだけでも、ありがたい気持ちでいっぱいになる。頼れる人がいると、本当に救われるものだ。

翻って、今回は在米時と違い、私が働きながらのワンオペだった。日本語の世界が広がり、治安は文句なし。帰国直後は、子どもだけで登下校するのはあり得ず、完全に付き添っていたが、今やすっかり子どもだけで通わせている。何なら、留守番もさせられる。24時間営業のコンビニに、惣菜が山積みで売られているスーパー。食事の準備は格段に楽だった。そして、何よりもわが子が育ってくれたことが大きい。もはや私との添い寝をすっかり嫌がり、寂しさは否めないが、成長を十分に実感できる貴重な機会になった。

Writer’s Profile

小西一禎
小西一禎
ジャーナリスト。慶應大卒。元共同通信社政治部記者。17年、妻の米国赴任に伴い休職、渡米。在米中退社。米コロンビア大客員研究員を歴任。各メディアへの寄稿・取材歴多数。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。
Twitter:chu__otto
Instagram:ponpyonpyon

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ジャーナリスト。慶應大卒。元共同通信社政治部記者。17年、妻の米国赴任に伴い休職、渡米。在米中退社。米コロンビア大客員研究員を歴任。各メディアへの寄稿・取材歴多数。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。